ブッ(笑)

 この静けさを破ったのは、彼だった。


 「俺の勘違いか(笑) でも、良かった♪」

 「うん」


 彼の屈託のない笑顔を見られたら、私もあのまま海に連れて行かれなかった事を心から感謝した。


 「ところで、アンタ名前は?」

 「七海です。“七つの海”って書きます。リキさんは……どういう字を書くんですか?」


 「別に字なんてどうだっていいよ。 それに、今更“さん”付けもねぇだろ?」


 彼は、ブッキラボウにそれだけ答えた。


 まぁ、確かにそれもそうだ。


 昨日、いきなり「ボケ」って言われた時は、怖い人って想ったけれど、それだけ真剣に想ってくれていたって事だよね?

 そもそも、私が“お母さん”と呼び間違えてしまったわけだし

 なのに


 「変態呼ばわりしやがってさ」

 「本当にごめんなさい」


 不思議とリキの前では素直になれる。

 今まで、蒼空といた時は反発ばかりしていたのが嘘のよう。

 きっと恩人だから……だよね?