「ところで、貴女の服ってこれだけ?」

 
 彼女は、暖炉の傍に干してあるワンピースを指して言った。


 「……はい」

 
 日帰りのつもりだったから、何も持ってきていなかったんだ。


 「昔、私が着ていたので悪いけど、後で持ってくるわね?」

 「ありがとうございます」

 「ごめんなさいね」

 「えっ!?」

 「服。濡れたまま身に付けていると体温奪われちゃうのよ。目が覚めるまでは、あまり身体を動かさない方がいいって言うからね。着替えはやめたの」


 この言葉で、自分の姿を再認識し急に恥ずかしさが増してきた。


 「じゃ、冷めないうちにシチュー食べてね♪」

 「はい。」


 この小さな部屋に一人取り残された私は、とりあえず毛布を身体に包み、用意してくれたシチューを口にする。


 「美味しい」


 身体が温まったら再び眠気に襲われた。


 
   チチチチ……

   ピピ ピピピピ……


 鳥達のさえずる声に目を覚ますが、誰もいない。


   チロ チロ …… パチ バチ ……

 部屋の暖炉は弱々しげに燃えている。



 昨夜、千暁さんが来てくれたのか? 枕元にロングTシャツが1枚置かれていた。

 その上に置手紙


 “李樹と仲良くね♪”  


 たった一言だけ


 用意してくれた服を羽織り、お日様に誘われる様に外にでる。