「あなたのお母さんって人に頼まれたのよ」

 「えっ!?」

 「大した人よね。亡くなる前に“願いを一つ叶えあげる”って言ったら“涼香を幸せにしてあげて”ですって」

 「願いを叶える? って……あなたは神様なの?」

 「まさか(笑)でも、似たようなものかな?」

 「……?」

 神様の友達?

 「私たちの仕事はね、あなた達を幸せにしてあげること」

 「幸せ?」

 「そう、と言っても切っ掛けを与えるだけ。後はあなた次第ってとこね」

 「私次第?」

 「そうよ。“幸せになりたい”って心から願わねば掴めないし、願うだけでもダメ。

だから、あなた次第。

 泣くのは自由だけど、幸せを願うなら今日で最後にする事ね」

 「……分かったよ」

 「どんな事があっても笑い続けること。それをこの花の前で約束してくれるかしら?」

 「うん、約束する。……私、どんな事が起きてもこれから笑っている」

 「よしっ(笑)じゃ、私はこれで」

 
 それだけ言った鈴という人は風のように消えてしまった。

 心の中に温かな風が入り込んだ気がした。