いつの間にか、陽菜とワカメ男。
私とトサカ男に別れている。
警戒しきっている私は、半径10cmの間隔をあけて。
本当は、もっと開けたいのだけど、離れたら寄ってくるのよ。
だから、これが限度ということで。
「もしかして、キミは彼氏がいたりする?」
「ま、まぁ」
いないけど、
『いない』
なんて言ったら何されるか分からないもの。
「でも、ここにはいないでしょ?」
「えっ!?」
「今だけ。
もう夏は終わったけどさ、一時の青春ってやつ楽しもうよ」
私が保っていた10cmの壁が崩された。
トサカ男の左腕が素早く私の右肩を通り越し、左肩に乗っかった。
「……」
「可愛いね」
そんなこと……
肩に乗っかっている手がゆっくりと腰の位置まで下ろされていく。
好きでもないのに、身体の温度が上昇するのが自分でも分かる。
どうしちゃったのよ?
これが、最愛の彼氏とかにされているのなら、嬉しいドキドキがあるのだろう。
でも、今ここにいるのは出会ってまだ10分しか経っていないチャラ男。
傍からはどうみられているんだろう?
チャラ男にひっかかったナンパされた女?
よく似合う恋人同士?
間違っても兄妹には見えないよね?
どれも嫌よ。
だけど、今日一日なら。
そう思ってとりあえず愛想笑だけは振りまいていた。
だって、仏頂面をしたせいでトラブルに巻き込まれるとかよく聞くでしょ?
そんな事はもっと嫌。