シモンのいるところに戻ると、彼は穏やかな表情で迎えてくれた。
「間に合いましたね」
「なんとかな」
「ここは、この館の最上階ですわ? どうなさるのですか?」
『白き石が光る時、道は開かれます』
突然聞こえた不思議な声。
「えっ?」
「誰だ?」
「お婆様?」
俺たちの声が重なった。
「白き石? ソフィア殿、心当たりはあるか?」
彼女は黙って横に首を振る。
「つかぬことを伺いますが、白き石とは貴女が首にかけられている水晶の事では?」
「これですか?」
彼女は、ネックレスを首から外した。
白というより半透明の石。
確か、先代女王の忘れ形見とか言っていたな。
水晶は光らないだろう?
「フロレス.デ.アモル」
「えっ!?」
俺の心の内を知ってか知らずか、突然シモンが石に向かって呟いた。
「ソフィア様、大切なお言葉をお婆様から預かってはいませぬか?」
「大切な……言葉?」
シモンは何かを知っているのか? 力強く頷いた。
彼女は、何かを思い出したかのようだ。
「….ラスタン…キラ……そうよ、『フロレス.デ.アモル、ボイ.ア.ラスタンキラ』」
flores de amor, voy a lartanquila
彼女のこの言葉を待ち焦がれていたかのように、水晶が光りを放ち始めた。
その強い光に吸い込まれるかのように、一瞬身体が浮いた気がする。
いや、浮いていたのだ。
信じられない。
俺は、今まで怪奇現象や摩訶不思議などは信じてはいなかった。
しかし、今目の前で起こっていることも事実なわけで。
塔の略天辺から月明かりの中をゆっくり、一つの場所に向かって舞い降りている。
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