『ふっふ、は~、ふっふ、は~』


ビデオ講習で見た妊婦さんは、確かこんな風に呼吸法を実践していた。

そして傍らには。


『大丈夫?頑張れ!ほら、ふっふ、は~、ふっふ、は~』


痛みに耐える妻の腰を一生懸命さすってやる夫の姿。

それをやさしい笑顔で見守るのは。


『上手ですよ。もう少しですからね。赤ちゃんも頑張ってますよ!』


いかにもベテランを主張していそうな顔のしわを持つ看護師。


まるで絵に描いたような、いや、ビデオの中だけの理想像。



・・ぎぃえええええ~!痛い!痛い!痛いんだってばぁ~!!



すでに痛みがひっきりなしに襲ってきていた私だが、相変わらず部屋には一人きり。

いや、薬品たちが無言で私を見下ろしている。



・・ちょっと~!本当に大丈夫なんでしょうね!

ひょっとして赤ちゃん産まれてたりしないの?



このまま誰にも発見されないまま、子どもを産むんじゃないのか、

このときの私は、真剣にそう考えていた。


なぜなら。