そんなの、わかるはずもない。 もう三年くらい前の話だ。 親父が消えて、涙が消えて、 愛が消えて、 親子という名前も消えた。 家族という名前も消えた。 「……………」 しんとした真っ暗闇に、トントンと櫂兄が階段を下りる音が響く。 ──・・・もういいや。 考えることさえ面倒だった。 ガバッと布団を被った。 布団の中の闇が、何故だかすごく怖く思った。