家に帰宅した頃には,時計の針は十時五分前を指していた。 「ただいま」 玄関から声をかけると,母親の甲高い声が返ってきた。 「おかえり。遅かったのね」 「うん。聖名さんのところに寄ってきたから」 「そう。今準備するわね」 母親の聞きなれた声に癒され,束の間,目を瞑る。 「ありがとう。着替えてくる」 十座は階段を上がり,自分の部屋へ足を踏み入れた。 「…甲子園。か」