「あの、葵夫妻とお話することってできないですか?」
唯が言うと、村儀は少し難しそうな顔をした。
「できなくはないと思うが…が、すんなり応じてもらえるとは思えないが」
村儀の言葉に、唯は頷いた。
「わかってます。どうしても、聞きたいことがあるんです」
唯の真剣な眼差しに、村儀はふぅ、と息をつくと頷いて了承した。
「少し、待っていろ」
そう言うと村儀は携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
村儀が電話で交渉してくれているその姿を見ながら、唯は少し、頭の中を整理していった。
私は葵夫妻の本当の娘だった。
…まゆ先輩は、実の娘じゃなかった。だけど、私の記憶の中では、姉と呼ばれているまゆがいた。
小さいころの、朧げな記憶。
それによれば、両親は私を手放すことを嫌がっていた。
けど、私はまゆの代わりに自らどこかへ行くことを望んだ。
…どこへ行ったんだろう。
もしかして、お父さんとお母さんの元に引き取られたのって、このタイミングだったのかな。
迎えにはたぶん、男の人が来ていて、だけどその人はお父さんじゃなかった。
それなら一体、あの男の人は何者なの?
その人に一体、どこに連れて行かれたの?
「東峰」
村儀に呼ばれて顔を上げる。
「すぐに出られるか?」
聞かれて頷く。
「30分だけ何とか時間を取れた。すぐに向かうぞ」
言われて唯は力強く頷いた。
点を結ぶ糸口。
何かをつかみかけている。
そんな気がした。
唯が言うと、村儀は少し難しそうな顔をした。
「できなくはないと思うが…が、すんなり応じてもらえるとは思えないが」
村儀の言葉に、唯は頷いた。
「わかってます。どうしても、聞きたいことがあるんです」
唯の真剣な眼差しに、村儀はふぅ、と息をつくと頷いて了承した。
「少し、待っていろ」
そう言うと村儀は携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
村儀が電話で交渉してくれているその姿を見ながら、唯は少し、頭の中を整理していった。
私は葵夫妻の本当の娘だった。
…まゆ先輩は、実の娘じゃなかった。だけど、私の記憶の中では、姉と呼ばれているまゆがいた。
小さいころの、朧げな記憶。
それによれば、両親は私を手放すことを嫌がっていた。
けど、私はまゆの代わりに自らどこかへ行くことを望んだ。
…どこへ行ったんだろう。
もしかして、お父さんとお母さんの元に引き取られたのって、このタイミングだったのかな。
迎えにはたぶん、男の人が来ていて、だけどその人はお父さんじゃなかった。
それなら一体、あの男の人は何者なの?
その人に一体、どこに連れて行かれたの?
「東峰」
村儀に呼ばれて顔を上げる。
「すぐに出られるか?」
聞かれて頷く。
「30分だけ何とか時間を取れた。すぐに向かうぞ」
言われて唯は力強く頷いた。
点を結ぶ糸口。
何かをつかみかけている。
そんな気がした。