家に帰って荷物の準備をした後、俺は理香の家に寄った。


「理香は寝てるわ。だいぶ疲れたみたい。それより、翔太君の方はどう?」


俺はおばさんに全てを話した。


翔太が記憶喪失で自分の名前すら分からない事、俺の事も理香の事も分からない事、双子である事も忘れた事。


ただ、事故に遭った原因だけは、さすがに言えなかった。


「おばさんも手助けするから、何かあったら言ってね。あ、さっき担任の先生に連絡しておいたわ」


「ありがとうございます、おばさん」


「夕方、理香が目覚めたら顔を出しに行くわ」


「はい」


お礼を言って、俺はバスに乗った。




コンコンッ


病室を開けると、翔太は寝息を立てて寝ていた。


荷物を置き、椅子に座る。


次起きたら、記憶戻ってるかな…


そんな事を考えた。


「桃威君」


ドアの開く音と共に声がした。


「あっ…、ども…」


さっきの看護婦さんだった。