「治るんですよね?」


俺は聞いた。


聞きたくない質問だったが、いつの間にか口に出していた。


「治らない訳じゃないけど……治らない場合もあるわ」


あまりに悲惨な現状に、俺は言葉をなくした。


「桃威君も辛いだろうけど、自分の名前も分からない翔太君は、もっと大きな不安を抱えてる。支えてあげてね?」


俺が頷くのを確認すると、看護婦さんは笑ってナースステーションに戻っていった。




コンコンッ


ノックをして、俺は扉を開けた。


ベッドには、相変わらず包帯を巻いた翔太が横たわっている。


「痛むか?」


俺はベッドの横に腰掛けた。


「ちょっとだけ…でも大丈夫です」


他人行儀の翔太の言葉に、桃威は少なからず壁を感じていた。


「俺は渡邊桃威。お前の双子の弟だ」

「双子…?」


それも忘れちゃったのか…


桃威は、自分の胸の中にポッカリと穴が開いた気分になった。