「……医師を呼んできます。すいませんが、外でお待ち下さい」


看護婦さんに半強制的に追い出され、と同時に、慌てた様子で医師が二人、病室に入っていった。


「理香、翔太君、何が変だったの?」


不思議そうにお母さんが聞いた。


「見てなかったの?翔太の口元」


「口?」


桃威も首を傾げる。


「翔太ね、私と桃威を見て、『誰?』って言ったの…」


「えっ……」


桃威も驚きを隠せない。


「よくテレビで、頭打って記憶喪失になった人の話とかあるけど、翔太はそんなんじゃないよね?ね?」


私は必死だった。


いつの間にか、頬に涙の通り道が出来ている。


お母さんは、私を抱きしめた。


「理香、あなたは一旦家に帰りなさい。貧血の事もあるし、ここで理香まで倒れちゃったら困るわ」


私はお母さんに支えられながら病院を出る。


今日は、晴天だった…