「翔太!!」


「翔太!」


病室のドアを開けながら、私と桃威は叫んだ。


ベッドには、体中に包帯が巻かれて痛々しい姿の翔太が横たわっていた。


その横では、看護婦さんが点滴のチェックをしている。


「翔太、大丈夫か?」


桃威が覗き込む。


「翔太、分かる?」


私も翔太に聞いた。



だ…れ…??



翔太の口がそう動いた。


「…え?」


私は目を見開いて固まった。


今、翔太は、私と桃威を見て「誰か」と言った。


頭を強打した後遺症って……


私は、自分でも血の気が引いていくのが分かった。


「どうしたの?理香」


お母さんが私の異変に気付いた。


私は部屋にいた看護婦さんに


「すいません…翔太、何か変なんですが…」


と震える声で伝えた。


「変?」


看護婦さんの手が止まり、翔太をまじまじと見る。


「渡邊翔太君?」


看護婦さんに呼ばれても、何の反応も示さない。


目をキョロキョロさせるだけ。