聞こえたんだ


『音緒ちゃんおりこうさん』


って


確実に幻聴だけど


どうしてもあいつに会いたくなった


早く伝えたかった


告えたよって


空港の中を全力で走る


ヴーヴー


ポケットの中で携帯が震える


こんなときに…と思いつつ携帯を手に取ると電話だった


それも知らない番号


若干苛々しながら電話に出た



「あっ音緒くん!?
 初音ちゃんが…っ」


近頃聞き慣れた声


ただいつもと違ったのは…


慌てていたことと


口から出た言葉


いつも明るい話しかしないのに


耳に入る話は決して明るい話ではない


思わず電話を切った


これ以上聞きたくなかったから


国内線乗り場に向かって走る


受付の人に時間の変更をしてもらい乗り込んだ飛行機の中で,俺はただ祈っていた


あいつが…


初音が笑顔で俺を迎えてくれることを