無色はじっと何か考え込んでから、言った。

「あの、わたし──もしもこの体が治療できたら、雨鳥さんを西に帰してあげます」

 雨鳥はびっくりしたように目を丸くした。

「必ず国境をなくして、西も東もない国にして、それで空気たちのピースピース号を探しに行きます」

 潮風が、蚕の糸のような長い髪の毛を揺らし、ワンピースの裾をふわりと持ち上げた。

「だから、雨鳥さんが治療法を見つけている間、このお店わたしにやらせてください」

 淡々と言う無色を見て、雨鳥は顔をくしゃっと崩した。

「やっぱり今日泊まっていかない?」

 笑いながら、雨鳥は言った。

「変なコトしちゃうかもしんないけど」
「馬鹿じゃないですか?」

 相変わらずニコリともしない無色の顔を見て、雨鳥は「あーらら」と言った。