無色の日の残像

 無色は、紙の面から顔を上げて雨鳥を瞳に映した。

「わたしは・・・・・・生きられるんですか?」

「きみの体の状態は、ウイルス兵器によるものとはまた違う。だから今軍にある治療法をそのまま使うわけにはいかない。すぐにどうこうはできないし、間に合わないかもしれないけれど」

 雨鳥は無色の手から紙の束を取り返して、カウンターの上に乗せた。

「今、民間の研究機関から誘われてる。正直迷ってたけど」

 無色はさっきの電話を思い出した。

「キミは、透明や空気たちの分も生きたいと思うかい? 俺はまだ──贖罪ができるのかな・・・・・・」

「生きたいです」
 無色は、頷いていた。

「わたし、まだ、生きていたいです」

 いつの間にか頬を涙が滑り落ちていた。

 初めて、無色は泣いた。 

 雨鳥は、泣いている無色を言葉を失ったように見つめていたが、やがて口を開いて、

「そうか、ありがとう」と言った。

 それから突っ立っている無色の肩を抱いて、テーブルまで連れていって座らせた。

「コーヒー、遅くなっちゃったね」