無色の日の残像

 無色を残したまま奧の扉から出ていって、雨鳥はしばらくして再び戻ってきた。

 手に、何か紙の束のようなものを持っている。

「随分白くなったね、髪」
 雨鳥は無色の長い髪の毛を見た。

「昔の透明ちゃんみたいだ」
「・・・・・・はい。もうたぶん、そんなに長くはもたないだろうって言われてます」
「そう」
「仕方ないです」

「俺が軍を去るときに持ち去った、研究の論文だよ」
 雨鳥はそう言って、無色に手にした紙の束を渡した。

「これ──は・・・・・・」

『体細胞における*テロメアーゼ活性の遺伝子カスケード』というタイトルが書いてあった。

「軍が開発したウイルスはね、体中の細胞でテロメアの長さを短くして、命を奪うものだった。俺がやってたのは、そのテロメアを伸ばして正常な細胞に戻すための研究だ」

 無色は、分厚い論文の束をまじまじと眺めた。

「ウイルス兵器ってのは、治療法がなければ完成しないからね。──無色、キミはまだ生き続ける気はあるかい?」