「軍に入隊して思い知った。東の戦姫、『戦場のかぐや姫』の知名度と、それがどれだけ西側にとって脅威なのか」

「空気、きみは・・・・・・」

「でも俺は、結構得意になった。そんな戦姫に会ったことがあるんだぜって言いふらして。はは、好きな相手なんだってのはさすがに秘密だったけど──馬鹿だよなあ」

 月明かりの消えた真っ暗な海の上で、空気は泣きながら笑っていた。

「この作戦が決まったとき、上官が俺のところに来て、お前のことを詳しく聞いてきたんだ。これに成功すれば、*二階級特進が決まってる」

「二階級特進って──空気──それは──」

 轟音が聞こえてくる。
 島の上空にさしかかった爆撃機に、駆けつけた味方の別の機体が攻撃を加えていた。

「羽海──」

 声を上げて駆け出そうとする無色に、空気は言った。

「無色、俺と死んでくれ」