どういうことなのか、無色には空気の口から放たれた言葉の意味がわからなかった。

「もう、来る」

 空気が繰り返すのを聞いた時、無色の全身で鳥肌が立った。

「──まさか」

 視界に、遙か遠い海上から、低空で島へと接近する爆撃機の機影が映った。

「俺の任務はね、囮と陽動。上手く爆撃ができればそれでもいいけど、本命はあっち」
「──クソっ!」

 身を翻して輝神のコックピットに戻ろうとする無色の手を、空気が掴んだ。

「は──離せ!」

 無色は手を握っている空気と、ぐんぐん近づいてくる機体を交互に見た。

「本当に──本当にあれには、羽海が乗ってるの!?」

 西側には男子にも女子にも兵役義務がある。無論、羽海が軍にいても何の不思議もなかった。