まあ無理もないか。こんな身長5フィート程度しかない、俺たちアメリカ人から見れば子供にしか見えないようなgirlが、体重250ポンドの巨漢でも食い切れないような肉と野菜の塊を、淡々と胃袋に流し込んでるんだからな。
ここまでくると人間業じゃねえ。東洋の神秘だ。
ディルクのやつはというと、例によってソーセージとパスタを並べて、ゲットした賞金をスマホで確認してやがる。
「どうだ? ちゃんとあるか?」
「ああ。間違いなく800万振り込まれてる」
訪ねた俺に淡々と答え、スマホをバッグへしまう。
「けど800万ってちょっと高くね? たかが結婚詐欺で。しかも何なの? この『国際連続結婚詐欺』って?」
すでに不要となった手配書をぴらぴらさせながら、あかりが尋ねてきた。左手のフォークには、ロブスターが丸ごと一匹串刺しにされている。
「まんまの意味だ。世界各国で連続して結婚詐欺やらかして、女どもから金を騙し取ってたんだよ」
言って、バドワイザーをぐびりとやる。
「賞金が高いのはなんで?」
ディルクのパスタを勝手にずるずるやりながら、再び聞いてくる。
あ、ディルクが不機嫌な顔してる。
「騙された女の中に、国連職員の幹部の娘がいたんだよ。パパ、ブチ切れちまったみたいでな。普通は事件を入念に検証してから懸賞金額決めるのに、娘がパパに泣きついてから20時間後には、800万で国際指名手配だ。ビン・ラ○ィンでもこんなスピードじゃ手配されねえよ。職権乱用も良いとこだな。ま、おかげで俺たちは、こうして美味いメシにありつけたわけだが」
Tボーンステーキをがぶり。あふれる肉汁が実に美味い。
「そもそも、結婚詐欺ごときで懸賞金かけられたなんて話、ただの一度も聞いたことねえよ」
あかりのサラダにフォークを伸ばすと、ナイフで弾かれた。さすがサムライガール。
「ふーん。だから自分が手配されてることすら知らなかったんだ。あのヘタレ」
ロブスターを殻ごとばりばり。
「そゆこと」
俺はディルクのソーセージをぱくり。辛い。こいつはチョリソーだな。
――1時間ほどして――
「あー……食った食った」
なんだかんだで5皿ほど食っちまった。
食後の一服をやりたいとこだが、ここは禁煙。あかりもいるし我慢だ。