「なぜ君が我々中国人を嫌うのか。その理由を私は知っている」
「ああ?」
「非常に個人的な理由だ。3年前――」
『3年前』。その単語を聞いた瞬間、一気に心拍が上がるのが自分でもわかった。
「……やめろ」
「気の毒な事故だった。いや、そこには明確な意思が介在していたのだから、事故ではないのかな?」
「……黙れ……!」
「君ももう少し、精神文明を理解したらどうかな? そうすれば少しは『彼女』の御霊を感じることが――」
「黙れっつってんだ!」
左手で銃を拾い、ぴたりと王の額にポイントする。
「それ以上その鼻の下のケツの穴を開きやがったら、少ねえ脳みそぶちまけさせるぞ」
だが王は無表情のまま、
「もしあの時の『相手』が日本人だったとしたら、君は今下で待つあの子に同じことをするのかな?」
「俺は黙れと言ったんだ……!」
息が荒い。一気に汗が噴き出してくる。身体も熱い。今すぐ裸になって冷たいプールに飛び込みたい気分だった。
「歴史に『もし』なんてもんはあり得ねえ。あかりは仲間だ。銃なんて向けねえ」
「確かに歴史に『もし』はないかもしれない。だが我が祖国には、君が中国人を恨むように、日本人を恨む者も多い。その中には、君と同じような経験をした者もいるだろう。そんな彼らがあの子と相対したとして、『歴史に『もし』はあり得ない。過去は変わらないのだから、受け入れろ』と言われて納得するだろうか? はたしてあの子に何をするだろう」
「何が言いてえんだ」
「可愛い子じゃないか。それにまだ若い。これから先の人生、苦難もあろうが様々な幸せも待っているんだろうね」
「いい加減そろそろぶっ放すぞ……!」
「自分の状況をよく見たまえ。君が撃つより私の方が早い」
確かに王は、さっきから全くマズルをぶれさせていない。きっちり俺の眉間をポイントしてやがる。
と、ここでインカムから、
『ジル。動くなよ』
ディルクの声。ずっとこちらの様子をうかがっていたのか。
おっせーよバカ。何が『僕が援護する』だ。
「ところで私は、君じゃなく“ホーク・アイ”と勝負したかったのだがね」
「さっき負けたじゃねえか。ヘリごと」
憎たらしく笑ってやる。
「私はまだ生きている。スナイパー同士の勝負が決まるのは、どちらかが死ぬまで。生きてるうちは試合続行だ」
「なら、そろそろ決まるな」
「ああ?」
「非常に個人的な理由だ。3年前――」
『3年前』。その単語を聞いた瞬間、一気に心拍が上がるのが自分でもわかった。
「……やめろ」
「気の毒な事故だった。いや、そこには明確な意思が介在していたのだから、事故ではないのかな?」
「……黙れ……!」
「君ももう少し、精神文明を理解したらどうかな? そうすれば少しは『彼女』の御霊を感じることが――」
「黙れっつってんだ!」
左手で銃を拾い、ぴたりと王の額にポイントする。
「それ以上その鼻の下のケツの穴を開きやがったら、少ねえ脳みそぶちまけさせるぞ」
だが王は無表情のまま、
「もしあの時の『相手』が日本人だったとしたら、君は今下で待つあの子に同じことをするのかな?」
「俺は黙れと言ったんだ……!」
息が荒い。一気に汗が噴き出してくる。身体も熱い。今すぐ裸になって冷たいプールに飛び込みたい気分だった。
「歴史に『もし』なんてもんはあり得ねえ。あかりは仲間だ。銃なんて向けねえ」
「確かに歴史に『もし』はないかもしれない。だが我が祖国には、君が中国人を恨むように、日本人を恨む者も多い。その中には、君と同じような経験をした者もいるだろう。そんな彼らがあの子と相対したとして、『歴史に『もし』はあり得ない。過去は変わらないのだから、受け入れろ』と言われて納得するだろうか? はたしてあの子に何をするだろう」
「何が言いてえんだ」
「可愛い子じゃないか。それにまだ若い。これから先の人生、苦難もあろうが様々な幸せも待っているんだろうね」
「いい加減そろそろぶっ放すぞ……!」
「自分の状況をよく見たまえ。君が撃つより私の方が早い」
確かに王は、さっきから全くマズルをぶれさせていない。きっちり俺の眉間をポイントしてやがる。
と、ここでインカムから、
『ジル。動くなよ』
ディルクの声。ずっとこちらの様子をうかがっていたのか。
おっせーよバカ。何が『僕が援護する』だ。
「ところで私は、君じゃなく“ホーク・アイ”と勝負したかったのだがね」
「さっき負けたじゃねえか。ヘリごと」
憎たらしく笑ってやる。
「私はまだ生きている。スナイパー同士の勝負が決まるのは、どちらかが死ぬまで。生きてるうちは試合続行だ」
「なら、そろそろ決まるな」


