ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》

 
ごっしゃあああん!
 
バイクごと屋上に落っこちた。
「ってー……。クソが!」
身体の左を下にして落ちたせいで、左肩から腕にかけてが痛む。だがそんなことを気にしてる場合じゃねえ。俺はすぐさま身体を起こし、塀に背中を預けて片ひざ立てて座り、右の腰から抜いたP226で勘を頼りに王が撃ってきた方向に数発発砲する。
数メートル先で着弾音。どうやら王には当たらずに、壁や貯水タンクを支えるフレームにでも当たったらしい。
それとほぼ同時に、右肩に激痛。
「ぐあああっ!」
右肩が血を噴き出し、痛みと衝撃で銃を後ろへ取り落とす。またも正確な射撃で、俺の肩を撃ってきた。
近づいてくる足音。
「ちっ……!」
左の銃を抜き、3発発砲。だが肩と腕を痛めてるせいもあり、避けられたようだ。足音はさらに近付いてきて――
「当たらなければどうということはない」
俺のきっちり5歩手前で立ち止まったのが気配で知れた。
低く、重苦しい声。チャイニーズなまりの英語。屋上を風が吹き抜け、辺りの埃をいくらか吹き散らした。
「てめえが“シルバー・バレット”か……」
「お会いできて光栄だよ。ジル“ブラッディ”ファング君」
油断なくライフルを構えた東洋人の男。銃はL96A1。ディルクの言った通りだ。目は細く、黒髪をオールバックにまとめている。黒のスラックスに黒のシャツ、真夏だというのに、黒のロングコート。スナイパーは暗い服を好む。狙撃ポジションについた際、見つかりにくくするためらしい。
その目が無言で語っている。『銃を捨てろ』と。俺は左手の銃を置いて、手を上げた。
「予想してた通りの見てくれだな」
「君は予想とはだいぶ違ったね。もっと思慮深く、己の感情を封印したような風貌だと思っていたのだが」
「そりゃ買いかぶり過ぎだ。俺はしがないBHだぜ。殺しのプロじゃねえ」
「『元』プロだろう?」
口の端にうすら笑いを浮かべてやがる。だが、目は全く笑ってねえ。
「俺の経歴知ってやがるのか」
「少し調べさせてもらったよ。君もシールズ時代、ずいぶん殺しているようだね」
「てめえと一緒にすんな」
「同じだよ。殺人に違いなどあるものか。そこにあるのは、数の違いでしかない」
「哲学の講義を聴く気はねえよ」
王はため息を一つつき、