ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》

俺は、王が狙撃してきたポイントを見上げる。古いアパートメントハウス。屋上の辺りが壊れてる。おそらくヘリが墜落したときに、一度あの屋上にぶつかったんだろう。そのときうまいこと王のやつは屋上に逃れたのか、それともたまたま放り出されたのか――そこまではわからんが。
いずれにせよ、やつは屋上から降りられないらしい。もし降りられるなら、俺達がここに来るまでの間に、いくらでも逃げる時間はあったはずだからだ。
やつがライフルを油断なくこちらに向けているのが、ここからでも見える。だが射線が確保できずエイム出来ないようで、撃ってはこない。そもそも逃げるつもりはないらしい。やり合う気満々だ。
「さて。いよいよ大詰めだな」
俺は背中に背負っていたケースから、使い慣れたアサルトライフルを取り出す。
M4A1。シールズ時代支給されていたのと同じモデルだ。扱いやすさと高い信頼性で気に入っている。色々カスタムして、当時と同じ仕様にした。
「問題は、どうやってあそこまで行くかだな」
「アパートメントに入って、フツーに階段で上がってけば良いぢゃん」
「言うと思った。階段上りきる手前で、ドタマぶち抜かれるわ。螺旋階段だったりしたら、1階で撃ち殺されかねねえ」
こういう単純な撃ち合いの場合、相手より高い位置を取っている方が有利だ。ましてや、王みたいなバケモノ級のスナイパー相手ならなおさらだ。それにモタモタしてると、警察が来ちまいかねねえ。もうすでに、遠くの方から近付いてくるサイレンの音が聞こえる。
「ぢゃあ、どおすんのさ?」
「そうだな……」
俺は、アパートメント周辺を見渡し、
「あの電柱」
「電柱?」
俺は、アパートメントに一番近い電柱を指差した。
「お前あれにライトセイバーして、アパートメントに倒すこと出来るか?」
「そんなん、ちょーよゆー」
「じゃあやってくれ」
「いやいやいや! 『やってくれ』って、こっから飛び出したら、即撃たれて終わりぢゃん!」
「ちゃんと援護する。心配するな」
言って俺はM4のボルトを動かし、チャンバーに初弾を送り込む。
「なんか、ガチで殺されそうなんですけどー……」
「絶対大丈夫だ。俺が守る」
あかりは一瞬あっけにとられたような顔をし、
「……ホントに守ってくれる……?」
「ああ。ブシにニゴンはねえ」