ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》

エージェント達はデュケインを守りながら、頭を低くさせ駆け足でビルの中へ飛び込む。
そのままドアが閉まり、姿が見えなくなった。
「成功?」
あかりが背中から聞いてくる。
「ああ完璧だ。ここまでは」
うまくいった。俺は『宙に浮かんだ亀裂』を見つめながら、内心で安堵のため息をついた。
昨日、ニュージャージーでセキュリティの会社をやってる知り合いに電話して、『あるもの』を大至急で運んできてもらった。
防弾プラスチック。それも、フルメタルジャケットの7.62mm弾もストップする、軍用にも使われているやつだ。
透明度が高く、距離が遠ければ、例えスコープを使ってもそこには『何もない』ように見える。王の『狙撃を』止められないなら、こいつを使って『弾丸を』止めちまおうと俺は考えたわけだ。
高さ20フィート、幅16フィートの防弾プラスチックの下の方を、車のドア一枚分くらいの大きさを切り抜き、車寄せのすぐ前に立てておく。車が到着したら、その切り抜いた穴の部分を通るようにドアを開け、中の人物はその穴をくぐり抜け、防弾プラスチックの板の向こう側へ。こうすれば、スナイパーにはターゲットがはっきり見えているが、当のターゲットは車を降りたと同時に防弾プラスチックの向こう側に立っているのだから、狙撃したところで弾は『届かない』。
実際、一晩でここまでやるには苦労した。プラを手に入れたは良いが、問題は設置だった。マックスに頼んでCIAと、俺の昔のコネでペンタゴンから直接ホワイトハウスにかけあってもらって、ようやく設置にこぎつけた。
だが実験している暇はなかったので、ぶっつけでやるしかなかった。名付けて『Project AT-Field』。正直、うまくいくかどうはフィフティ・フィフティだった。
だがこれで――
「ディルク!」
直後一発の銃声。とほぼ同時に、一機のヘリがテールローターから煙を出しながら、真下に落ちていくのが見えた。さっきからずっと飛び回ってた、ヘリ群の一番外にいたやつだ。
おいおい、てことは――
『捉えた』
ディルクからの返答。
「おい、まさか『あれ』か?」
『そうだ。ヘリから狙撃してきた』
冗談だろ。目算だが、どう見てもこっから3500フィートは先だぞ? こんな距離を、揺れるヘリの中から撃ったってのかよ?