ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》

まるでアカデミー賞授賞式だ。上空からは何機ものターボシャフトエンジンの音。プレスのものやら警察関係のものと思われるヘリが旋回している。
飛行禁止空域にしなかったのか? わざとやってんだろうが、こんなにプレスが多くちゃ、逆に仕事しにくいだろ。
「違ったっぽいね」
「ああ。だが、いつかは来るんだ。最後まで気が抜けねえ」
言って俺はミントを2粒、口に放り込む。
「食うか?」
あかりに差し出すと、
「ん、さんきゅ。てかタバコ吸わないの?」
手のひらで受け取り口に入れた。
「お前いるのに吸うわけにいかねえだろ」
「なに? あたしの身体気にしてくれてんの?」
「そりゃ未成年だしな。身体は大事にしろ」
「そう思うなら、自分がやめればいいのに」
「俺はいいんだよ。今さらだ。ほら、2台目来たぞ」
ちょうど次の黒塗りセダンが、ゆっくりと入口前に入ってきた。いつも思うんだが、なんで社長だの議員だのいう連中は、黒塗りの車にしか乗らねえんだ? 俺ならブルーとかパープルとかイタリアンレッドにするがな。
ドアが開いて、ブロンドの男が一人降りてくる。あの顔は見覚えある。確かイギリスの大使だ。
イギリス大使は、当然何事もなくビルへと入っていった。
「違ったか」
少し安心して力を抜く。と、あかりが唐突に
「お腹すいた」
「またかよ?! 出てくる前に、ホテルで散々食ってたじゃねえか!」
ホテルの朝食バフェィで、軽く10人前は食ってたはずだ。
「あれは朝ごはん。ブランチまだだし」
「ブランチってのは、朝メシ食わなかったときに食うもんだ!」
「育ち盛りだからすぐお腹すくの。おやぢにはわかんないだろうけどね。ウケるー♪」
「どこが育ち盛りだ。全然育ってねえだろうが」
あかりの姿を、頭のてっぺんから足元までずいっと見る。
「うっわ、キッモっ! やっば! このおっさんJKのカラダ舐めまわすように見てくんだけど!
てか知ってる? アメリカとかヨーロッパって、児童ポルノにちょー厳しいんだよ?」