「おいおい勘弁してくれよ。ここまで来てそりゃないだろ?」
「もぉー、しょーがないなー……」
やがてごそごそ物音が聞こえてきた。どうやら話がまとまったようだ。やるなら今だ。俺はインカムの向こうの相棒に呼びかける。
「Attack」
『Einwilligung』
返答をしっかり確認してから、俺は路地へと入る。そして出来る限り脅すような声で、
「Hey!」
不意に声をかけられ、驚いたのだろう。男はびくっとなってこちらを振り向く。女の水着を脱がそうと、背中の紐をほどいているところだった。
焦った表情で喉の奥から声を絞り出すように、
「な、何だよあんた?!」
「What are you doing?! She is my steady. You wanna be kicked your ass?!」
「え?! え?!」
かなり動揺している。おもしれえ。もっとからかってやろう。
「You nahmsayin'?! If you wanna be fucked, kiss my dick!」
「あ……えと……」
予想してたより、肝が据わってないようだ。あまり修羅場をくぐってないんだろう。
ここで、水着を直し終わったあかりも乗ってきた。
「Honey!!」
俺の胸にすがりついて、嘘泣きを始める。もちろん、涙など一滴も出ていない。
「He was going to rape me! I said "MAJI no way!"...」
そんなこと一言も言ってなかったじゃねえかと思いつつも、そういうことにしておいた方が都合が良いので、そのままにしておいた。
英語の中にも微妙にギャル語が入っているのが、いかにもあかりらしい。
「Damnit! Hey Jap! Suck my dick, son of a bitch! Screw you!」
「ひ、ひい!!」
あわてて路地の奥へ逃げ込む。路地の奥が行き止まりではないことを知っているのだろう。だが、こちらの計算通りだ。奥には……
「おっと。ここは通行止めだ」
しっかりディルクが待ち伏せている。
「な、なんだ?!」
「エイジ・ヒムロだな?」
後ろから追いついた俺が声をかける。
「な、何で俺の名前を……。それに何なんだ、あんたらは?!」