車の乗り降りや建物の出入りはもちろん、走行中の車であってもタイヤを撃ち抜いて強引に車を止め、バックアップの車に移動しようとしたところを狙ったり、建物内でも窓際に立てば窓越しに狙われる。
それら全ての状況を考慮して、発砲前に捕獲しなければならんのだからな」
「だよなやっぱ。けど、現状それしか方法がねえんだよな」
頭をがしがしかく。
「んじゃあかり。今日から3日間のウィリスの予定と移動ルートを全部出してくれ。それとマップと衛星写真から、3Dモデルも起こしといてくれ」
「うえええ、大仕事になりそう……」
「文句言うな。7000万のためだ」
「ホントにゲットできんのかなあ。なんか、また失敗するよおな気ぃするんですけどー……」
言いながら、ライティングデスクの上でVAIOをカタカタやり始める。
「始める前から、縁起でもねえこと言ってんじゃねえ」
とは言え、俺も少しは後悔してたわけだ。『面倒なヤマつかんじまったかなあ』ってな。
「けどさー。いくら予定調べても、予定通りなんて動くの? ましてや移動ルートなんて、コロコロ変えるもんぢゃね? こういうお偉いさんの場合」
国土安全保障省とFBIのサーバに同時にハッキングかけながら、あかりがもっともな疑問を口にする。
そう。こういう政府要人なんかの場合、安全上の問題から、予定やルートを有機的に変更しながら護衛するのは定石なのだ。
「まあな。だからお前には俺達が活動する間、常時情報を拾い続けてもらう」
「はあああ?! 常時?! ウソでしょ?!」
「ウソじゃねえよマジだ。でなきゃ、ウィリスの正確な位置がつかめねえ。正確な位置がつかめなきゃ、王のウラもかけねえじゃねえか」
「マジめんどい……。なしよりのなし……」
「あ、それと、護衛の無線の傍受も頼むな。当然暗号化されてるから」
『びきっ!』と、あかりの後頭部にマンガみたいな青筋が浮かぶのが見えた(気がした)。
どっちみち長い作業になりそうだったので、
「んじゃ俺ら、ちょっくら必要物資買ってくっから。悪いけどよろしくな」
背中に声をかけるが完全シカトだ。
俺はディルクと二人で部屋を出た。
――2時間ほどして――
「おっつー」