「その決議案ってえのは?」
「中国に対する今後の対応。ま、あんなコトやこんなコトだな。わかるだろ?」
「なるほど……ね」
要するに、中国への風当たりをきつくするのが目的か。乱暴な言い方すれば、一種の吊るし上げだろう。ジェノサイドや台湾、日本の尖閣、ウイルス。例をあげればキリがねえ。各国もそれぞれ業を煮やしてきたんだろ。
「で、王のターゲットはわかるか?」
「現状で考えられるのは二人」
マックスは指を二本立て、
「一人は国連大使のデュケイン。もう一人は、対中強硬派のウィリス上院議員だ」
「国連大使はわかるとして、なんで上院議員が?」
「決議案提出に先んじて、議会で最終調整が行われる。そこで最も大きな発言力を持っていると言われてんのが、ウィリスなんだ」
「ふむ……」
「まあ、決議案はすでに出来上がっちまってるし。ウィリスがいなくても、提出はされるんだがな。レッド……えーっと、なんちゃらドラゴンにしてみれば、潰せるもんは潰しておこうってことなんだろ」
ディルクは顎に手をやりじっと話に聞き入っているが、あかりはなんだかボーっとしてる。ハイスクール2年で止まってる子供には、この手の話は難しいんだろ。
「だから問題はウィリスじゃねえ。デュケインの方だ」
マックスが説明を進める。
「もちろん、デュケイン一人を殺ったところで、決議案がすぐに消えるわけじゃねえ。けど例えば国連ビルの真ん前でアメリカの大使が殺されてみろ? 会議どころじゃねえ。恐らく各国の担当者全員、ソッコーで国へ帰っちまうぜ。『後日、日を改めて』なんてことになってな。
夕方のCNNでガンガン流されて、ロイターやらAP通信やらが一生懸命仕事して、世界中に情報発信してくれるだろうぜ。
で、会議再開のメドが立たないまま、各国担当者が順番に消されていくんだ。王ならそのくらい造作もねえ。そして決議案はうやむやになっていくって筋書きだろう」
「……つまり暗殺そのものが目的ってよりも、会議の妨害が目的か」
「そゆこと」
「その情報、確かなのか?」
ディルクが質問する。
「99%以上確かだぜ。NSAのダチも全く同じ意見だ」