すなわち、自分が持ってるとっておきの情報と引き換えに、欲しい情報を手に入れるわけだ。
ニューヨークのハンターズネストは、さすがに金がかかってて綺麗な建物だった。中はまるで、おしゃれなカフェだ。
上海と北京のネストとはえらい違いだ。以前行ったこの2ヵ所は、まるで豚小屋だった。
くせえしきたねえし、並んでるPCも10年以上前のオンボロだった。回線速度も死ぬほどおせえ。くたばりぞこないのばばあの散歩でも、もう少し機敏だ。
それに比べてこのニューヨークのネストは、このままビバリーヒルズに建っててもおかしくねえくらいのおしゃれさんだ。そんな中に、むさくるしいBHどもがたむろしてやがる。逆にこの景色はおかしい。
「うっわ暑苦し。マジ1分もいたら、ガチで妊娠しちゃいそうなんですけど」
入るなり遠慮も何もなくでかい声で言いやがったせいで、ゴツいおにーさん達の視線を一斉に集めちまった。
俺はすばやく、持っていたペットボトル（未開封）であかりの後頭部をどつき倒す。
「いった！　何すんのさ！　マジ弁護士送るよ？！　慰謝料請求するよ？！」
「良いから大人しくしてろ、お前は」
ちなみにあかりはネストに来るのは初めてだ。
中はPCの端末がずらりと並んでいる。これらの端末はネスト独自のネットワークに接続されていて、BHがアップした情報が収められているサーバにアクセスできる。
情報交換の方法はこうだ。まず専用のフォームで自分の『ページ』を作り、自分の持ってる情報の『見出し』をできる限り多く書き込む。『○○で△△の容疑かけられてる××の情報あります』みたいな感じだ。
それが終わったら、次に自分の欲しい情報を一つだけ書き込む。今回俺達の場合だと『連続暗殺容疑、王 黒星について』ってな具合だ。
そして最後に『王 黒星』で検索をかける。すると、もし王の情報をアップしているやつ――仮にA氏としよう――がいれば、そいつのページがヒットする。そのページを開けば、そいつが欲しがってる情報が表示されるから、その情報を俺達が持っていればそれをフォームに書いて送信してやる。すると情報は一度ネストのサーバに格納され、A氏があらかじめ指定しておいたメアド――スマホやPCの――に俺達が送った情報の見出しだけがメールされる。