「不明だが、王の居所を突き止めるには、まずやつの『目的』を調べる必要がありそうだな」
「確かに」
「マジめんどーい。その手の捜査、やる気感ゼロだし」
勝手にバーガー3個も注文してほうばってやがる。さっき船の上で晩メシ食ったじゃねえか。
見ろ。また写真に撮られてる。『Great!』じゃねえよ、そこのイタリア系のおっさん。
「マックスにしろとは言わんから、せめて50パーくらい出してくれ」
「無理。あたし的捜査ってネット限定。てかこのバーガー、何気にヤベー」
ダメだこいつ。時間も時間だし、完全にやる気なくしてやがる。
「わかったわかった。とりあえず今日のところはホテルに引き上げよう。ねみーし疲れたしまずは寝る。んで、明日から活動だ。あかりが調べて何も出てこねえんなら、他の同業者に先越されることもねえだろ。そこまでの緊急性はなさそうってことだ。だろ？」
「そうだな。これ以上ここにいても、できることは何もなさそうだ」
「オッケー。んじゃさっさとホテル探しに行くぞ。
ほら、あかり。とっとと食っちまえ。てかお前、こんな時間にそんなもん食ったら太るぞ？」
「ちょー余裕。あたし太んない体質だから。もがもが」
残ったバーガー全部一気にほおばって、あかりは席を立った。店を出るとき、なぜか店員と客に拍手されちまった。
　
朝になり、まず俺達は『ハンターズネスト』へ行ってみることにした。
『ハンターズネスト』ってのは、BHを支援する某財団のNPOが運営する機関で、言ってみりゃBHのたまり場みてえなとこだ。要するに、情報交換の場。
あまり数は多くないが、大都市にはだいたい一つくらいはある。ワシントン、L.A.、ラスベガス、パリ、ローマ、ロンドン、マドリッド、ベルリン、アテネ、シンガポール、モスクワ、上海、北京、ソウル、東京、名古屋、札幌、ホノルル、バンクーバー、リオ・デ・ジャネイロ、そしてこのニューヨーク。他にもあるが、主なものはこんなとこだ。
ここに行きゃ、現役で活動してるBHが持ってる生の情報が手に入る。あかりが得意とするようなウェブ上の情報ではなく、アナログな情報だ。
普通に考えりゃ、BHが自分の大事な情報を他人に、しかも商売敵の他のBHに教えることなんてなさそうなもんだが、どうしても欲しい情報が手に入らないときは、ここで『交換』する。