ショウケースにべったりへばりついて、中に展示してある小道具やら衣装やらを観察しまくってやがる。
プラネットハリウッド。その名の通り、ハリウッドのテーマレストランだ。店の中には、実際に映画の撮影に使用された衣装やらグッズやらが展示されている。
メニューの名前も、映画にちなんだものばかりだ。ター○ネーターだのダイ○ードだのプレ○ターだの。まあ、映画好きにはたまらない店ではある。
しかしいくらマニアックな店とはいえ、こんな時間にティーンネイジャーのガキが店内ではしゃいでると、かなり目立つ。しかも例によって、わけのわからんコスプレだ。今日はノースリーブの黒装束の着物の上に、同じくノースリーブの白いガウンみたいなのを羽織ってやがる。意味はわからんが、背中には漢字の『二』の文字。そして腰の後ろにはいつもの忠吉。なぜか普段と差し方が違う。
よりにもよって、欧米人が最も反応するカッコだ。案の定客の何割かは、店内の展示物よりもあかりにカメラを向けている。『SAMURAI Girl!』だの『Oh! BLEA△H!』だのと聞こえてくる。
当のあかりはまるで気づいちゃいないが。あ、戻ってきた。
「お前が映画好きだったとはな。てっきりANIME専門かと思ってたぜ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
イスに座り、テーブルに届いていたジュースを飲む。グラスを両手で持って飲んでやがる。仕草がいちいちガキっぽい。
「来る店を間違えたかもしれんな」
「あん?」
ディルクがカクテルを飲みながらつぶやく。
ダヴィドフを取り出そうとして俺は手を止めた。目の前にあかりがいるし、ここは禁煙だった。アメリカの大都市は、タバコにうるさいとこが多くて肩身が狭い。今度はネバダへ行こう。
「なんで?」
質問してきたあかりの方は向かずに、
「情報収集が目的なら、もっとBHの集まる店にするべきだった。ここはほとんどが観光客ばかりだ」
「まあ、そうかもしれんな……」
俺は店内を見回す。だが見回すまでもなく、ほとんど観光客ばかりだというのはわかる。こんな有名なテーマレストラン、どう考えても観光客向けだろう。BHなどそうそう来るはずもない。
「何? 今あたし、悪者的な扱い受けてる系?」
「そうは言わんが……」
「なんかムカつくんですけどー」
「まあ、落ちつけって」