周囲は静まり、
さっきの騒ぎが嘘のようだ。
「晴樹君」
私は愛しそうに
彼の名を呼ぶ。
彼もしゃがみ込んで、
目の高さが合う。
「本当に、
本当に良かった」
また、
涙があふれ始めた。
号泣していた。
「無事で良かった。
守ってくれてありがとう」
彼は申し訳なさそうな
顔をしていた。
何も言わず、黙っていた。
そして、やはりパトカーは
この学校の前で止まった。
そこに校舎から
出て来た先生たちが
対応してくれていた。
そこに教頭先生が
近づいてくる。
優しそうな声で言うのだ。
「花井君、
少し来てもらえますか?」
覚悟していたのか、
顔は強張っていた。
「分かりました」
晴樹君は素直に従って、
進んでいった。
私たちを取り残して。

