部屋に入ると、隆介をますます好きだと思った。



どれだけ慌てていたのかってわかる。




携帯電話が床に転がっていた。

弁当のお箸が1本とんでもない方向に飛んでいた。

玄関の鍵も閉めず、電気も付けたまま…


私を追いかけてくれたんだ。




素直になりたい。


今、落ちた携帯電話を拾う隆介の背中に抱きついて…


『ありがとう・・・隆介。』


そう言いたいと思った。




もう我慢できないよ。


だって、好きなんだもん…


こんな気持ち生まれて初めて。



私は一歩足を前に踏み出す。


隆介の背中に手を伸ばす。



ふと触れた瞬間に振り返る隆介が言う。


「なんだよ・・・お前のせいで、弁当冷めただろ!」



「そんな言い方ないでしょ!!隆介が悪いんじゃん!」


言いたくもないセリフが口から出る。


あぁ、またダメだった。




素直になるってこんなにも難しいことなんだ。


どうすれば、素直にかわいくできるんだろ。



落ち込む私の頭に、隆介が手を乗せる。


「反省したか?俺も悪かった。鈴子と電話してたからスネたんだろ?」


どう考えてもこの会話は、カップルっぽいよね。


ね~、マジであんた複雑すぎるよ。




私のこと、どう思ってんの?

私の気持ち、気付いてるんならそんなにいじめないでよ…