「そんな濡れたままで動くなよッ! また汚す気か!?」 「ご、ごめん」 その言葉にも嫌気が差す。 声にも態度にも、存在にも。 そして、自分のやり場の無い気持ちにも。 大きな2つの鞄は片方が黒味掛った焦茶、片方は緑掛った黒。 どっちの事なんだよ。 問い正すのも煩わしく、まるで汚い物を触るような手付きで茶掛った方を開けた。