丸椅子に座った老婆は、顎の辺りに絆創膏を貼り、肘と膝に包帯を巻いていた。 「どこかで転んだようですね───ご自分では覚えて無いそうですけど」 「覚えて無い?」 「はい。聞いても『解らない。気が付いたらこんなになってた』って」 看護師の優しく語るその口調が、全然優しく聞こえ無くて。 老婆の姿を見ながら呆然とした。