そこに、老婆の姿も2つの黒い鞄も無かった。 ───出て行ったか。 何の罪悪感も無く、素でそう思い、安心する。 安堵を抱えながら、電話の方へ向かった。 が、コールは取る前に鳴り止んだ。 引っ込めたかけた手が、再び鳴るその音に反応する。