────…‥ いったい何度床を拭けば良いんだろう。 男の割には几帳面だと自負はしていだが。 砕けた硝子破片を拾い、拭き、掃除機を掛けた。 化粧水の香料をたっぷり含んだ雑巾を洗う。 「…‥つゥ」 カランと小さな硝子の欠片とともに、アイボリーの洗面台にポタポタ血が滲んだ。 蛇口から吐き出る水に吸い込まれ、溶かした絵の具のように血は排水口に消える。 この血はアイツに繋がっているのか。 俺が奴の松葉? 強く結んだ瞳から、色の無い血がさらさら溢れた。