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『沙耶は俺が守ってやるぅ!』



あれは確か、幼稚園のお遊戯会だったっけな。


瑛が王子様役で、あたしはお姫様役だった(熱出て休んだ子の代理だったけれど)。


本番、『姫様は僕が守る!』のセリフを、瑛が間違えたんだっけ。



…でもちょっと、嬉しかったな。



「わ、うわっ…人多っ…」



夕方で人が多くなってきた道を、流れに逆らって駆けて行く。


瑛の誤解を解く。


それで、自分の気持ちもちゃんと伝える。


…たとえそれで、二人の関係が変わっちゃっても…。


後悔はしないと思うから。


第一、あたしの知ってる瑛はそんなことで変わるバカじゃない。