「又兵衛――あれは?」


僕は地平線すれすれの処を指差して又兵衛に訪ねた。又兵衛も僕の視線の先を追う。


「見えるか保孝、あそこに見えるのが、俺が育った処だ。行ってみるか?」


又兵衛の誘いに僕は素直に頷き、椅子の横にユーフォニュームを立てて置くと先に歩き出した又兵衛についてゆっくりと歩き出した。


「だいぶ、遠いみたいだね?」


「いや、そんな事無いさ、直ぐ近くだよ」


「ふーん…」


又兵衛の言う通りだった。


遥か地平線の向こうに有る様に見えた。


又兵衛の森は5分も歩かないうちに、僕の目の前まで来てしまった。