こころの展覧会


お面をしていない彼女は、誰が見ても仏頂面。しかし、どんな表情でもその美しさは崩れてはいなかった。藍は初めて間近で、お面を外した椿姫の姿を見た。

肩や腕にかかる細く艶やかな黒髪が、白雪の肌に映えて、妙に艶めかしい。咲き誇る花の如く、匂い立つような美しさ。真っ直ぐに伸びた背筋が、立ち姿に気品を添える。

藍が特に目を奪われたのは、椿姫の瞳だった。
長い睫に縁取られたその瞳は、右は陽に透かしたら琥珀色に見えるような薄目のブラウン。左は神秘的で、畏怖の念を抱いてしまいそうな深い緑色。

「あんまりじろじろ見てると、怒られちゃうわよ」

藍のすぐ隣に立っていた柊は、くすくすと笑っている。藍は慌てて、視線を外した。

「珍しかったんでしょ?椿姫の母親がね、どこの国か忘れちゃったんだけど、ハーフだって聞いたわ。綺麗な瞳よね」

言って、柊は淡く笑った。

「はい……すごく綺麗です」

そして藍は、また、まじまじとその双眸に見入ってしまった。