大人の男性にしては高めの声。声質がいいので、耳障りではないのだが、気になるのは口調だ。
藍の顔はひきつっていた。
「そんなに怖がった顔しないでよ~、悲しいじゃない」
皐月は、冗談風に口を尖らせた。
くるくる変わっていく表情。
「あんたのしゃべりかたが生理的に受け付けないんじゃない?」
そう言って、木蓮はくすくすと小さく笑う。細めた目には、意地悪そうな光が揺れている。
「失礼しちゃうわ。そんなことないわよねぇ?」
皐月は、藍に同意を求めた。
それと同時に、握られた手の強さが、強くなった。
いつまでこの手は握られたままなのだろう。
真顔の皐月は、どう見ても男性なのだが、綺麗系な顔をしている。染めてるのであろう金髪も、ナチュラルに似合っている。黙って町を歩けば、逆ナンとかされてそうな感じである。
しかし、カマ口調だ。
それとも、これが俗に言う“オカマ”なのだろうか。
世の中にはいろんな人がいるんだと、心の中で繰り返した。


