早く。
早く。
早く。


頭の中でぐるぐるとその言葉だけが回っていました。

ソックス一枚で走る私には、身なりを気にする余裕がありません。
こんな格好で走っていること自体ものすごく恥ずかしいです。

けれどそんなことを言っている場合では無いから。
だから私は走ります。





 かなり走った所で、トラが声を上げました。


「姐さん!あれですよ!!!あの倉庫です!」


私はトラと共に倉庫の中へと足を踏み入れました。

重い鉄製の扉を開けると、中は薄暗く土のような匂いがします。
何の匂いかわかりませんが古臭い匂い。


ゆっくりと静かに中へと進みます。

異常なほどに上がった息を抑えながら、奥へ入っていきます。



するとそこに、人影が見えました。


「サボ!!!」



そこには数人の強面の男たち。




そして男たちに囲まれた人間が一人いました。



柱にくくりつけられ、うな垂れて頭から血を流しています。

顔中に殴られたような傷。






「マコ・・・。」




紛れも無くそれは、サボでした。