猫とうさぎとアリスと女王

 身長は中学生の時に急激に伸びた。
その結果、今は180センチもある。その上未だに身長は伸び続けている。

パーティーではシンプルな服装にも関わらず目立ってしまった。


「椎名さん、息子さんと並んでもらえますか?」
「目線こっちにお願いします!」
「もう少し肩寄せてください。」


母さんが愛想よく対応するものだから、僕は嫌そうな顔はできなかった。

できるだけ表情を和らげて指示に従う。
本当はそこで仏頂面をしてもいいのだけれど、もうそんな子どもじみたことはやめようと思った。

母さんのお陰で僕はこういう暮らしを出来ている訳だし、母さんの収入で絵を描くこともできているのだから。
仕事の迷惑になるのだけはやめようと思った。


「疲れた・・・。」


やっとカメラのフラッシュから逃れることができて、僕は一人外の空気を吸いに出た。
風が冷たくて心地良い。


「大変だね。有名デザイナーの息子さんは。」


声がした方に目線を向ければ、そこには岳志さんがいた。
持ってきたシャンパンのグラスを渡してくれる。


「喉渇いてる?まだガキだから飲めないか。」


僕はその言葉にムッとして奪うようにグラスを受け取った。


「これくらいなら飲めます。」


岳志さんはケタケタと笑った。
たぶん・・・からかわれてる・・・。


「煙草吸ってもいい?」

「どうぞ。」


白い煙を吐く岳志さんは凄く大人っぽくて、その横顔に見とれた。

僕もそんな風になりたいと思った。