病室の前に着いた。

ドアの横に貼り付けてある名前が、おふくろの名前だった。

確かにここに、おふくろが入院しているのだ。

ガラ……

オレはゆっくりとドアを開けた。


「……」


おふくろは酸素マスクをして寝ていた。

目を閉じていた。


「…おふくろ?」


近くに寄って呼んでみても、目を開けようとしない。

オレはとたんに自分を失った。