「こんな朝早くからどうしたんだよ」
「今日は任務あるんですか?」
「ああ、昼ぐらいから」
「どこに?」
「‥邪魔する気か?」
「まさか」
くすくすと笑うアメスは、頬が赤かった。
熱‥じゃねぇよな。
‥俺がさっき見ちまったからか‥‥。
朝からとんでもねぇもん見ちまった。
「すぐそこだ」
「え?」
「隣町の森にドルガーが出るんだと。だからちょっと行ってくる」
「そうですか。大変ですね」
敵のくせして、堂々と相手のアジトに来て、この発言。
しかも、笑って『大変ですね』って‥。
「‥裏がありそう」
「何か?」
「んにゃ、何でも」
タオルを手にとって洗面台へ向かうと
ハンカチを引きずりながらトコトコとオニキスが付いてくる。
ハンカチが重たくて飛べないのだろうか。
ぴょんっと洗面台の縁に立つと、洗面器に水を入れてやる。
そうして2人(?)で顔を洗うのは、もう日課だ。
あれから一週間経ったが、俺たちには何の進展も無い。
それでもいいか‥。
と思っている自分も、何処かにいて。
死んでもいいと思っているわけじゃない。
この先何年も生きたいとは思っている。
けど‥
タオルに顔を埋めながら、アメスを窺った。
今日も、机の上のチャロ石の欠片をじっと見つめている。
そこへ体(というより全身)を洗ったオニキスが飛んでいく。
そう、思っているのだけど‥。
自分だけが好きでいて。
その気持ちを押し付けて。
相手を困らせる様な事してもいいのだろうか。
そう、思う。
そう思ってしまったら、厄介な事に
手を出せるものも、
なかなか手を出せなくなってしまうんだ。