カシスオレンジと波の音



「何しに来たんだ、お前」



4つのグラスに氷を入れていた佐倉さん。



「カクテル作るのが見たくて」



「残念だけど、シェイカーとか使えないから!ただこうして混ぜるだけ」





割り箸を使って、グラスの中の液体を混ぜる。


いろんな色のお酒が並んでいた。




「カシスオレンジって美味しい?」



「どうかな。俺は、これしか飲めないだけ」




割り箸の先をなめた佐倉さんは、甘すぎると言って、透明の液体をグラスに注いだ。




「早く大人になりたいな」



私の小さな声をちゃんと拾ってくれる。



割り箸でグラスを、カンって鳴らした後に、その割り箸を私へ向けた。




「大人になんかならなくていいって。俺はガキの頃に戻りたいけどな」




「そうなの?」