ボクは背を向けた。

「さようなら」

 恐らく聞こえてないだろうけど、かまわない。
 礼儀までの挨拶なんだから。

 箱に入った子猫は、タダ鳴いている。
 捨てられたとは、思って無いんだろうなぁ。

 飼えないんだから仕方ない。
 ……仕方ない。

 心の中で、自分と猫に言い訳して、ボクは帰る。
 だって……仕方ないんだから。

 振り返らない。
 アレルギーだから駄目なんだよ。

 ボクは帰る。
 ひぐれおしみが鳴いてる。