へたくそなギター弾き

見るとそこには、母さんの字で【父さんが倒れた。 病院にいるから帰ったら、来て】と…急いでいたんだろう、要点だけが書き殴られていた。


父さんが、倒れた…?
僕はその事を理解するまでに大分時間が掛かった。
 とりあえず、壊れたギターが入ったケースを床に置き、病院の名前が書かれた紙を握りしめ、無我夢中で走った。


その時ばかりは、病院の名前を書いておいてくれた母さんに感謝した。
(父さんは死んでしまうんだろうか?)
病院に付くまで僕は色んなことを考えた。


まだ教えてもらってないことだらけなんだ。
まだ言いたいことも、感謝の言葉だって…。



『ハァッ…ハァ…ッ…すいません─』


病院の自動ドアを抜け、受付で病室を教えてもらい、駆けつけると
ベッドに横たわる父さんと、隣で父さんの手を握り眠る母さんが居た。


父さんの腕や胸にはいろんなモノが付けられていた。


『父さん…。』


僕の呼びかけに目を開けた父さんは、元気そうだった。


「ごめんな。
いきなりでビックリしたよな。」


それでもやっぱり、声には元気が無かった。


『父さん、死ぬの?』