「今、お前は成長期だから心配しなくてもそのうち押さえられるようになるさ。
父さんより立派なギター弾きになれよ!」
そう言って、大きな手で僕の頭をクシャクシャしながら、優しい笑みを浮かべてた。
でも実際は、立派なギター弾きにはなれなかった。
追い越すことも、認められる事もない。
目指す壁が高すぎたんだ。
そう自分に言い聞かせながら、僕は毎日ギターを弾いた。
へたくそだと言われても、「止めちまえ」と罵られても、僕は無心で弾き続けた。
僕の音を探し続けた。
どうしても父さんを追い抜きたかった。
でも、その闘志はある日消えてしまった…
その日もいつものように誰も来ない路地裏で、ギターを弾いてると
「あ、へたくそなギター弾きだ」と俺と同い年くらいの少年が近づいてきた。
それでもかまわず弾いてると、「おい、なに無視してんだよ!」と僕からギターを取り上げた。
ガキはニヤリと笑い、高く持ち上げたギターを力強く振り下ろし、そのまま地面に叩きつけた。
僕はスローになっていく場面を、何も言わずにただ見ていた。
「ギターなんか止めちまえ。」
捨てぜりふを吐くガキを呼び止めるように、僕は低い声で呟いた。


