数分後─
弾き終わり静まり返る中、どこからともなく「大したことないな。」と声がした。
僕は声がした方を恐る恐る見た。
するとそこには、僕に弾いて見ろと言ったあのお客がいた。
周りにいた客は、その言葉につられるように「確かに」と口にした。
「親父さんに比べると下手くそだな」と。
『…っ…』
僕は唇を噛み締めながら、その言葉を黙って聞いてた。
これから僕は、一生父さんと比べられて生きるんだ。そう思ったら、悔しさがこみ上げてきた。
誰も僕を認めてくれない。
認めようともしない。
それがこんなにも悔しいものだなんて…
─それから父さんの弾き語りが終わり、夕暮れ時の道を家へと向かって歩いた。
僕は父さんの少し後ろで俯き、地面をひたすら見ていた。
「お前は立派なギター弾きだ。」
そんな僕に、父さんはポツリとそんな事を言った。
『…へたくそでも?』
「あぁ…。
お前は父さんの自慢の息子だからな。
今はまだ完璧に弾きこなせなくて当たり前なんだよ。」
『指が短いから…?』
僕の返事聞いた父さんは、あははと笑って「それもあるが…─」と続けた


